『風をください』を読んだよ

2010/7/13 火曜日 - 19:52:08

田辺聖子・著作
集英社文庫

 

『愛してよろしいかしら?』の続編です。『愛してよろしいかしら?』の感想はこちら。
『愛して…』が新装発刊されたのに、『風を…』はされてません。絶版で手に入らず図書館で借りて読みました。

34歳のOL斉坂すみれと22歳大学生ワタルの恋の後日談。
すみれは女性専用アパートからマンションの4階(エレベーター無し)に引っ越し、ワタルは社会人1年生になりました。
1年半は結婚も同棲も無しと決めて、お付き合い中。
そして、すみれさんは友人から年相応の40代男性・伊豆サンを紹介されます。ワタルと伊豆サンを両天秤にかけてしまう、すみれさん。しかし、伊豆サンとは一線をこえてはいません。

これは私の読んだ印象なのですが、すみれさんが恋い焦がれているのはワタルですが、伊豆サンと一緒にいると満たされた気持ちになる、そんな雰囲気です。こう書くと、すみれさんが打算的な女に見えるし、両天秤にかけるのも私は許せないはずなのですが、すみれさんの揺れ具合にどうしても共感してしまいます。
でも、私は両天秤しないけどね(というかデキない)。
でも、すみれさんには共感してしまう。
これぞ作者の筆の力だと思います。

最後の最後にワタルが自分の胸の内を明かします。これぞ読者が待ち望んでいた言葉だったと思います。『愛して…』には、ついぞ現れなかった言葉。
「嫉妬」
読みながらニヤニヤしちゃいました。

『愛して…』では、ワタルから積極的にすみれさんを誘っていたにも関わらず、どこか流されて付き合っているようにもみえたワタルが、嫉妬を口にした場面は感動的でした。
『愛して…』同様、すみれさん視点の物語ですので、ワタルの気持ちは読者にはわからないのです(一人称が徹底していて、物語に出てくる全ての出来事がすみれさんの目を通して描かれており、読者は神視点になれません)。

すみれさんの感情の揺れ、周囲の出来事、あらゆることが多面的に表現されています。
だから「これで決まり!」と言い切ることができません。
先のことなんてわからない、そういうあやふや感が心地良いです。

こちらは昭和57年発刊。2010年現在から28年前です。
現在の年齢を計算すると、すみれさんは62歳、ワタルは50歳。『愛して…』が発刊された年を基準に計算すると、65歳と53歳。
まさに、現在すみれさんと同じ年頃(私だ)の人の、親の年代ぐらいでしょうか。
そう考えると、すみれさんとワタルの恋愛が、より眩しく見えるのでした。

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