『愛してよろしいかしら?』を読んだよ

2010/6/30 水曜日 - 19:33:12

田辺聖子・著、集英社文庫

 

34歳OL(斉坂すみれ)と22歳大学生(矢富ワタル)の恋の話。
アパート(それも女性専用)の電話が共用だったり(電話がかかってきたら管理人に呼び出してもらう)、電子レンジがあるのは特別なことだったり、時代背景が妙に古いなあと思ったらなんと初刊は昭和54年。平成22年(西暦2010年)現在から31年前ですよ。
しかし話の展開も登場人物が考えていることも全然古くさくなかった。現代の感覚で懐古的な話を書いたのかなと思ったくらい。
ワタルの素行は斉坂すみれの視点で描かれていて、結局ワタルは複数の女の子と平気で遊ぶような子なのかどうかは、「事実」としてはわかりません。自分と一緒にいない時間に相手が何をしているかなんて、わからないのですから。
ワタルが他の女の子ともキスしたとすみれに言いますが、それが事実か嘘かも判らぬまま。軽いノリで会話しているので、ノリで冗談を言うことも、ノリで不誠実な事実を言うことも、どちらもあり得るように読み取れるのです。

この小説はすみれ視点なので、すみれ側の男関係は洗いざらい読者側はわかっていますが、ワタル自身はすみれの素行を知りません。
ワタルとすみれが出会って間もない頃など、すみれは他にも男がいるような口ぶりなので、ワタルとしては「他に男がいる」と思っているかもしれないけど、すみれ視点なので読者はワタルの考えがわからない。
ワタル視点の話も読んでみたかった。しかし、それが無いのが、この小説のイイトコロなのでしょう。
小説は事実を並べればいいってもんじゃないと気づかされました。
この小説はすみれ視点だから成立する話なのです。

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